【私の工夫】組織で取り組む「働き方改革」 個人で楽しむ「働き方改革」

備前市立伊里中学校 主幹教諭 早川 政宏(執筆時)


1 はじめに

 勤務に係る制度(給特法)が改正され、時間外在校等時間の上限が月45時間、年360時間と定められた。

 上の表は本格的に学校生活が再開した令和2年9月から3月までの、超過勤務時間(部活動の指導時間を含む)のパーソナルデータである。7か月間のデータではあるが、月45時間を下回ることができた。
 本稿は超過勤務時間削減に有効であった具体的な取組を紹介する。

2 組織で取り組む「働き方改革」

(1)地域の力をお借りする
 本校は地域とのつながりが強く、地域学校協働活動が非常に盛んである。学習アシスタントやゲストティーチャー、環境整備等をボランティアの方々に依頼している。受験前の面接練習は教員が面接官となり指導する学校が多い。本校はボランティアの方々に面接指導もお願いしている。生徒は教員とはひと味もふた味も違った緊張感をもって練習に臨み、教育効果も高い。
 地域の力をお借りするためには学校が地域に貢献する必要がある。生徒や教職員は地域行事に積極的に参加している。教職員は伊里地区のメンバーであることを強く自覚している。今後も地域と学校はツーウェイの関係でありたいと思う。

(2)日々の当たり前を見直す
 「清掃活動は毎日行う」「道徳の授業は学級担任が行う」「夏季部活動は18時まで行う」等、学校行事だけではなく、日々の当たり前を見直し改善することが有効であった。具体的には「毎週水曜日はノークリーンアップデー」「道徳の授業は学年団の輪番制で行う」「夏季部活動の最終下校時刻を17時30分にする」等を実施することで多忙感を解消することができた。根性論で進みがちな学校現場にとって、時間対効果(教育効果を希少資源である時間や教職員の労力で割り算して考える)を意識することが今後ますます必要になってくると考える。

(3)管理職のリーダーシップ
 本校では、トップダウンマネジメントにより、岡山県教育委員会働き方改革プランの重点取組である4本柱(時間管理の徹底、事務業務の軽減、授業準備支援、部活動休養日の徹底)が教職員の働き方に定着してきている。そして、「教職員のワーク・ライフ・バランスを実現させる」という強いリーダーシップにより、職員室が風通しのよい職場となっており、旧閑谷学校の石塀のような協業体制が確立している。

3 個人で楽しむ「働き方改革」

(1)時間泥棒を改善する
 新しい校務分掌を担当する際、必要な文書データが見つからず、大きなストレスを感じることがある。どの学校でも校務分掌表に基づくフォルダが1・2階層に設定されており、個人で変更することは原則禁止であると思う。サーバー内から必要なデータを素早く探し出すためには、3階層に「年度フォルダ」、4階層に「具体フォルダ」を作成し、この「具体フォルダ」にファイルを保存していく。少し深くなるが、時間泥棒の改善には年度フォルダの作成がポイントである。さらに、作成順が分かるようにフォルダ名やファイル名の文頭に01.や01_等の番号を振る。ナンバリングによって、フォルダは自動的に昇順に並び、引継の際、昨年度フォルダにある「具体フォルダ」を閲覧するだけで1年間の見通しをもつことができる。新しい担当者は、3階層以下の管理をコピーアンドペースト等を行いながら進める。

 上は私が平成30年度に進路指導担当を務めた際に作成した4階層の「具体フォルダ」である。フォルダ内には平成30年度のデータしか存在せず、新旧データの混在がない。保存年限を過ぎた場合には、3階層(「年度フォルダ」)以下を全て削除するだけでサーバー容量の確保も容易である。

(2)人から学ぶ
 管理職や同僚から多くのことを学んできた。業務改善につながる素晴らしい工夫や仕事術に関しては背中を見て学んできた。その中の1つにスケージュール管理がある。スケジュール管理は仕事を効率化させる上で非常に重要である。私にとってはデジタルよりもアナログがベストである。備忘録(ノート)見開き2ページに時間割表を貼り、必要事項をボールペンで書き込む。重要度や緊急度に応じて付箋紙を併用する。付箋紙のよさは並び替えが簡単で、誰でも手軽に使用できることである。私は正方形型の付箋紙に油性ペン(ネームペン)で書き込んでいる。大きく目立ち、調査等提出締切の失念を防ぐことができる。退校時には付箋紙を並び替えることで、翌日の段取りをつけることもできる。この段取りが時間対効果を高めている。

(3)書籍から学ぶ
 学級経営や教科指導と同様に、働き方改革に関しても自主研修が不可欠である。最近読んだ書籍から、非常に感銘を受けた文章を紹介する。

「子どもと向き合う時間の確保のために、働き方改革や業務改善を進めましょう」(中略)こう言っている限り、多忙は解消されません。(中略)児童生徒のための時間が多くて、今日の多忙があるのですから。(中略)むしろ、「自分と向き合う時間」(自分の好きなことをする時間や自己研鑽などで幅を広げる時間等、“刃を研ぐ”時間)をもっとつくるために、働き方改革を進める必要があります。(妹尾昌俊、2019、p.179)

妹尾昌俊(2019)『学校事務"プロフェッショナル"の仕事術』学事出版

4 おわりに

 今年度、管理職の許可を得て、働き方改革推進委員会を校内に立ち上げた。ミドルリーダーによる自主研修会である。委員会での議論を通して、具体的な取組を管理職や教職員に提示し、ミドルアップダウンマネジメントによる働き方改革を実現していきたい。具体的には、「部活動改革」「清掃活動改革」「給食指導改革」に取り組んでいきたい。
 私にはモデルがある。平成25年から3年間勤務した在外教育施設(日本人学校)での働き方である。勤務時間内に学級経営や教科指導、そして、校務分掌に係る事務業務等に集中して取り組める素晴らしい環境(清掃の外部委託、部活動の完全外部化等)があった。派遣教員の使命の1つは海外での勤務を通して学んだことを所属する都道府県に還元することである。3年間の研修成果を少しでも還元できるように、今後も楽しみながら「働き方改革」に取り組んでいきたい。


『教育時報』令和3年7月号「私の工夫」で紹介された実践です


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