【私の工夫】幅を広げた居住地校交流~オンラインや手紙でのやり取りを通して~

県立岡山南支援学校 教諭 三宅 麻帆(所属・職名は執筆時)


1 はじめに

 本校小学部では、平成28年度から居住地校交流を実施している。居住地校交流は、障害のある子どもと障害のない子どもの相互の触れ合いを通じて豊かな人間性を育むことや、教科等のねらいを達成することなどを目的としている。しかし令和3年度は、新型コロナウイルス感染拡大により、本校児童が居住地校に行って授業等を行う直接交流が難しくなった。そこで、どのような状況になっても確実に交流ができる方法として、間接交流(オンライン、手紙、作品の交換)を実施した。直接交流の意義や教育的効果が大きいことはもちろんだが、初の試みであるオンラインによる交流等を取り入れることで、交流の幅を広げることができた。

2 私の実践

①オンラインでの間接交流(小1A児)
 交流校の支援学級に兄がいたこともあり、保護者の希望で支援学級との交流を行った。Google Meet を使用し、オンラインで画面を通してお互いの自己紹介や簡単な発表を行った。交流する上で工夫したことは主に三つある。一つ目は、教室での臨場感に近づくように大型モニターを使用して行ったことである。最初は何が起こるのかわからず不安そうな様子も見られたが、画面に交流校の児童が映ると、手を振ったり挨拶をしたりしていた。二つ目は、交流の内容が学習の成果を見せ合うなどの、教育課程上無理のない範囲で取り組んだことである。本校の児童は、1週間前に行った校外学習で楽しかったことの発表をした。交流校の児童からは「いいなあ」「楽しそう」という反応が返ってきた。交流校の児童は図工で作ったカエルで遊ぶ様子や、頑張っているけん玉を発表した。

交流校の児童と手を振りあっている場面

三つ目は、言葉で話すだけでなく絵や文字、写真等で視覚的に伝わるような発表にしたことである。本校の児童にとって視覚的な物のほうが理解しやすいことを事前に伝えると、交流校の児童は、絵や写真などを入れて伝わりやすいように工夫してくれていた。自己紹介が終わると交流校の児童から、「好きな給食は何ですか」「将来の夢は何ですか」など多くの質問があった。また本校の児童も画面を見て、「小学校に行きたい」と言う場面があった。交流後、交流校の様子を聞くと、「実際に会ってみたい」「またお話したい」等と言っていたそうだ。今年度は実際に交流校に行き、本校の児童が好きな図工で一緒にロケットを作ったり遊んだりする予定である。

校外学習について発表している児童

②手紙を交換する間接交流(小1B児)
 手紙でのやりとりを通して自己紹介や、頑張っていることを紹介し合う間接交流をした。工夫したことは主に三つある。一つ目は、紹介の中に支援学校についての話を入れた点である。交流校の児童に支援学校のことを少しでも知ってもらうため、スクールバスで通っていることや、勉強の内容についての説明をした。写真つきの文書を作り、本校の児童が書いた手紙と一緒に送った。二つ目は、「交流籍」を意識してもらえるように、交流校の教室に自己紹介の手紙を掲示してもらったことである。学校は違うけれど近くに住んでいる友達であることを伝えてもらった上で教室に掲示してもらい、クラスの一員としての意識が持てるような工夫をした。三つ目は、交流しているという意識をより高めるために保護者にも手紙を一緒に見ていただいた。返信の手紙が届くと、本校の児童は交流校の児童の写真をじっと見つめ、指をさし嬉しそうに見ていた。保護者も一緒に眺め、嬉しそうに「ぜひ直接会って交流をしてみたい」とお話されていた。交流校からの手紙には、自己紹介や運動会で頑張ったことなどが書かれていた。今年度は交流校に行き、自己紹介をしたり外に出て一緒に遊んだりする予定である。

3 取組の成果

 昨年度の取組は、直接会うことはできなくてもお互いの顔や様子を知る良いきっかけになり、今年度の直接交流を円滑に行うためのステップになったと考えている。そのため昨年度の経験を生かして、今年度も事前にオンラインで顔を合わせたり、手紙を送って自己紹介をしたりして、直接交流を行う前に相手のことを知ることができるような事前学習を行う児童も多くいる。

4 おわりに

 卒業後の地域での生活において、障害のある人も障害のない人もお互いに尊重し合って充実した生活を送ることができる社会の実現のために、早期からの関わりが必要であり、まずは特別支援学校と交流校が協力して交流のきっかけを作ることが大切であると考えている。手紙でのやり取りやオンラインなどの間接交流と直接交流を組み合わせながら居住地校交流の活動の幅や機会を広げ、より良い交流を進めていきたい。


『教育時報』令和4年12月号「私の工夫」で紹介された実践です

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