【私の工夫】よりよい社会を考える子供を育てる社会科学習~振り返りの工夫と友達との対話を促す工夫を通して~

岡山教育事務所 義務教育支援課 学力向上班 指導主事(主任) 近江 祐一(所属・職名は執筆時)


1 はじめに

 令和3年11月12日、倉敷市立老松小学校で第31回中国地区小学校社会科研究協議会研究大会(岡山大会)、第24回岡山県小学校社会科研究大会(倉敷大会)が開催された。コロナ禍で様々な制約の中、大会を実施できたのは、岡山県小学校教育研究会社会科部会、倉敷市小学校教育研究会社会科部会の助言や協力によるところが大きく、この場を借りてお礼を申し上げたい。

2 校内研究主題の設定について

 大会主題「社会とつながる子供を育てる社会科学習―見方・考え方で『分かる』『決める』学び―」を受け、校内研究主題を「よりよい社会を考える子供を育てる社会科学習~振り返りの工夫と友達との対話を促す工夫を通して~」と設定した。 
 倉敷市立老松小学校では、令和元年度から3年間、社会科の研究を進めてきた。
 本校の課題の一つとして、ペアやグループでの活動が発表会のようになり、練り上げられるような対話的な活動ができていない現状があった。そこで、「友達との対話を促すこと」に焦点を当て、研究の柱の一つとした。
 また、教師が教え込むような教師主導の社会科を脱却し、子どもが主体的に学ぶことのできるように授業改善を進めた。子どもが主体的に学ぶことができるようにするための手立ては魅力的な教材発掘や予想を立て、見通しをもって追究できるようにするなど多様にあるが、本校では、特に「振り返り」に焦点を当て、研究の二つ目の柱とした。

3 研究内容について

(1)友達との対話を促す工夫
①問いをもちやすくする工夫
 自分たちとの関わり、感動や憧れ、体験的な活動等、子どもたちが調べたい、知りたいと思う事象を教材として扱うことで、自分の考えをもち、伝えやすくする。(図1)

図 1 問いをもとに対話している様子

②考えを表しやすくする工夫
 ワークシートの形式(図2)、板書とノートに事実と考え、重要語句を分けて示すこと等の工夫をすることで、事実を基にした自分の考えをもち、対話しやすくする。
③対話をしやすくする工夫
・フリートーク、ペア、グループ等の活動を適切に設定することで、話し合いに進んで参加できるようにする。
・思考ツール(図3)を使用することで、自分の考えが明確になり、自信をもって対話できるようにする。

図2 ワークシートの形式(B4)

③対話をしやすくする工夫
・フリートーク、ペア、グループ等の活動を適切に設定することで、話し合いに進んで参加できるようにする。
・思考ツール(図3)を使用することで、自分の考えが明確になり、自信をもって対話できるようにする。

図3 思考ツール「X チャート」を活用した事例

(2)振り返りの方法の工夫
①振り返る視点の工夫
 「友達との関わりについて」や「(授業の前後で)考えが変化したこと」等を振り返りの視点に位置付け共有することで、学習内容や学習方法について振り返りやすくする。
②学習の解決状況を振り返りやすくする工夫
 学習問題や学習計画の解決状況をホワイトボードに掲示し板書に位置付けることで、学習問題に立ち返り、学習の解決の状況を確かめやすくする。
③単元を通して振り返りやすくする工夫
 振り返りを1枚のポートフォリオ(図4)にまとめ、共有する活動を行うことで、友達の考えのよさや自分の学びを振り返りやすくする。

図4 1枚のポートフォリオへのまとめ方の例示

4 実践

 ここでは、昨年度の老松小学校の5年生の授業を紹介したい。
 5年生の「情報を生かして発展する産業」の単元で、ECモール、ECモールを利用しているJAPAN BLUE(倉敷市の企業)について取り上げた。身近にある企業を教材にすることで、子どもたちと社会的事象を近付けることができた。
 学習問題「ECモールを利用するJAPAN BLUEはどのように情報を生かしているのだろう」と学習計画を確認し、めあてについて予想した。そこで、見通しをもちJAPAN BLUEについての情報の活用の仕方で、まだ分かっていないことをはっきりさせた。
 その後、JAPAN BLUEの方にゲストティーチャーとして来ていただき、ペアやグループで話し合い、質問したいことを共有していった。
 子どもたちは主体的に質疑応答形式で追究し、関係図を示したワークシートにまとめていった。
 本時のまとめを子どもたちが考え、振り返る視点を共有し、端末を活用してポートフォリオに振り返りを行なった。

5 おわりに

 今回の研究により子どもの学び方や学びに向かう姿は大きく成長した。その根幹にあるのは教師の授業観の変化である。老松小学校の教員は真摯に研究に向かい、子どもを見る目を養い、様々な手立てを試行錯誤してきた。社会科の研究を礎にして他教科での学習指導にも汎用し、子どもたちに力を付けてきた。その結果は、全国学力・学習状況調査や岡山県学力・学習状況調査の結果にも十分出てきている。
 今後も子どもの姿を大切にしながら岡山県の教育のために尽力していきたい。


教育時報令和5年1月号「私の工夫」で紹介された実践です


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