【私の工夫】目的や場面、状況等を設定した外国語活動・外国語科の授業づくり

浅口市立六条院小学校 教諭 蜂谷 智史(所属・職名は執筆時)


1 はじめに

 コロナ禍のため、これまでのように買い物や旅行を楽しんだり親戚や友人に会ったりすることに躊躇する昨今、私の楽しみは家族とのんびり過ごすことである。特に3歳になった長男はおしゃべりが達者で、我々大人たちと自由に意思疎通を図ることができるようになってきた。また、1歳6カ月の次男は「まーまー(ママ)」や「ちゃー(お茶)」、「ちゃーだい(ちょうだい)」などと少しずつ言葉を習得してきている。そんな子どもたちとの時間が、私の元気の源と言っても過言ではない。

2 新学習指導要領が求める「言語活動」

 授業における言語活動の充実については、平成20年3月に公示された学習指導要領や「言語活動の充実に関する指導事例集」等が出された10年以上も前から求められている。また、今年度から全面実施となった新学習指導要領においては、言語活動の重要性や目的・場面・状況等を設定する必要性が改めて示された。さらに、言語活動は「『実際に英語を用いて互いの考えや気持ちを伝え合う』活動」(外国語活動・外国語研修ガイドブック)であると定義のとらえ直しもなされた。つまり、これまで多くの小学校で行われてきた歌やゲームなどは「言語活動を行うための練習」であり、そういった練習は言語活動を成立させるためには重要であるが、練習だけで終わることのないように留意する必要があるということである。

3 言語活動を設定する際の留意点

 本校では、言語活動のより一層の充実を図るために、
(ア) 【興味・関心】児童の生活場面や学習場面と関連し、興味・関心に沿っているか
(イ) 【必然性】児童全員にとって自分の考えや気持ちを英語で伝え合う必然性があるか
(ウ) 【相手意識】伝え合う相手を児童が意識できているか

の三つの留意点を踏まえて目的や場面、状況等を設定した言語活動を単元の中心に据えた授業を行っている。例えば、「生と死について英語でディベート」という活動を単元の中心に据えたとする。前項で示した定義に照らし合わせると、これは言語活動であると言える。しかし、一部の児童にとっては最適な言語活動かもしれないが、全員の児童にとって適切かどうかについては疑問が残る。誰のために、何のためにディベートをするのかが不明瞭だからである。そのため、私は目的や場面、状況等を設定した言語活動を計画する際には、前述した3点に留意するようにしている。本稿では、二つの学年の実践例を取り上げ、その具体を紹介する。

留意点の定義

4 留意点を踏まえた言語活動

(1)第3学年Let’s Try!1「This is for you.運動会の招待カードを作ろう」
 お店屋さんにふんした教師とのやり取り(=言語活動)を通して、さまざまな色・形のパーツを手に入れ、それらを自由に組み合わせて運動会の招待カードを作る活動を行った。学校行事である運動会と関連させたことで、欲しいパーツを手に入れるために多くの児童が熱心に活動に取り組む様子が見られた。また、「お父さんは青色が好きだから、青色を多めに貼る!」「おばあちゃんのためにクローバーを作る!」と招待カードを渡す相手をイメージしながら、欲しいパーツを教師に伝えている児童もいた。

3年生児童が作成した招待カード
欲しいパーツについてALTとやり取りをする 3年生児童の様子

(2)第5学年「Where is your treasure? ALTの先生に地域のおすすめスポットを紹介しよう」
 建物や道案内の言い方を学習したあとに、地域のおすすめスポットについてまとめ、自分たちの住む鴨方町のことをあまり知らないALT(外国語指導助手)に対して、紹介する活動(=言語活動)を行った。そのために、本単元の始めに、ALTは鴨方町のことをあまりよく知らないという内容の寸劇を児童に見せ、必然性や相手意識を児童が強くもつことができるようにした。また、教科書の活動は架空の町を題材としている一方、この活動は実際に自分たちが暮らす町を題材としているため、多くの児童がスムーズに活動に取り組むことができていた。

5年生児童が作成した紹介ワークシート

5 おわりに

 ここまで読まれた方は、なぜ私が「1 はじめに」で家族の話をしたのか、お分かりかもしれない。児童が外国語を習得するためには、目的や場面、状況等の設定が大事であるが、幼児の母国語習得にもそれらは関わっているように最近特に感じる。喉が渇いたため、母親にその気持ちを伝えたいという目的や場面、状況等があって初めて「まーまー」や「ちゃー」、「ちゃーだい」と言うのであって、その気持ちが満たされているときに「ママだよ」「これはお茶だよ」といくら言い聞かせても、効果はあまり期待できないことが予想される。
 当たり前のことかもしれないが、外国語教育を行っていく上で、目的や場面、状況等を設定した言語活動が重要であることを再認識することができた。今後も、【興味・関心】【必然性】【相手意識】の三つの留意点を踏まえて目的や場面、状況等を設定した言語活動を単元の中心に据えた授業を行いながら、引き続き外国語教育の研究と子育ての両立を図り、岡山県の子どもたちのために尽力していきたい。


『教育時報』令和3年2月号「私の工夫」で紹介された実践です

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