【私の工夫】外国語活動における主体的な活動を促す授業づくりの工夫~深い学びに向かう中間指導を通して~

岡山市立西大寺南小学校 教諭 小林 桃子(所属・職名は執筆時のもの)


1 はじめに

 学習指導要領改訂にあたり、「主体的・対話的で深い学び」が謳われている。外国語科・外国語活動における「主体的・対話的で深い学び」を実現していく手立てとして、「主体的な活動の中での言語活動の充実」を目指し、指導の工夫を行った。
 ここでは、児童が主体的に活動できる環境づくり、言語活動の充実を図るための中間指導の2点について、第3学年の「What's this?」での授業実践とともに紹介する。

2 主体的な活動を促す環境づくり

 初めての外国語活動となる3年生においてまず大切にしたいと思ったのが、違和感なく言語表現に慣れ親しませることである。
 「What's this?」では、担任とALT(外国語指導助手)とのブラックボックスクイズでのやりとりを数回繰り返すことで、何度も出てくる表現(“What's this?”など)に自然に気付くことができるようにした。クイズを終えた後、「どんな英語が聞こえた?」と問いかけた。最初のやりとりで既に“What's this?”を聞き取れている児童もいれば、そうでない児童ももちろんいる。そこで、児童に「もう1回やってみるね」と投げかけることで児童が繰り返し用いられる表現に気付くきっかけを与えた。同様のやりとりの後、「聞こえた?」と問いかけると、2回目では「聞けた!」と言わんばかりに表情がパッと明るくなったり、大きく頷いたりする反応が見られた。こうした指導の下、単元の導入である1時目には、“What's this?”“It's ~ .”などの表現に気付くことができるようになってきた。
児童が言語表現に慣れ親しむには、明確な場面設定の中で用いることが必要なのではないかと考えた。3時目では、中心的な言語活動を「絵クイズ」に設定した。

絵カードの種類

 当初は自分の背中にある絵カードが何かを、友達とのやりとりの中で答えていく活動を予定していた。しかし、やりとりの対象となるカードが背中にある状態ではコミュニケーションの基礎ともいえる、アイコンタクトができない。そこで、写真のような形式に変更した。

「絵クイズ」の活動の様子

 これにより、児童が互いに自然とアイコンタクトをしながらコミュニケーションを図ることができた。

3 言語活動の充実を図るための中間指導

 私が1単位時間の中で常に取り組んでいたのが中間指導である。Activity1→中間指導→Activity2という流れの下、中間指導の内容を工夫することで、Activity1からActivity2 にかけてめあてを進化させ、児童の変容を促すことが可能となる。
 ここでは先に挙げた、「絵クイズ」での中間指導を紹介する。Activity1では、「ヒントを考えて絵クイズをしよう」というめあてで、絵クイズを行った。活動は3人組で行い、自分以外の二人にヒントをもらいながら自分が身に着けている絵カードの絵を英語で答えるものである。児童はスリーヒントクイズを通して、「色」「形」「カテゴリー」などのヒントを用いることができていた。3時目では、これら3種類のヒントだけで
なく「答えに関連する語やジェスチャー」などを用いてより分かりやすいヒントを出すことにめあてを進化させ、そのための中間指導を行った。

中間指導におけるめあての進化(例)

 中間指導が効果的に働く要因として、実際に児童が感じている困難さが解消されることや児童がめあてを達成した姿を共有できることがあると考えた。そこで、Activity1 の中での児童の困難さを把握するため、ヒントを出しあぐねている児童に注目したり本時で目指す姿に近づいている児童を観察したりした。児童の抱えている困難さとして、やはり3種類のヒントだけでは友達の絵カードの答えが出ないことが見受けられた。
 そこで、中間指導で、目指す姿に近づいているあるグループの活動の様子を学級全体に紹介した。このグループは、“It's a bear.”という答えを引き出すために、まず“It's brown.”“It's big.”“It's an animal.”のヒントを与えていた。しかし、この三つだけでは答えに至らず、絵カードにあった蹄を表すジェスチャーや住む場所を表す「山」をさらにヒントとして与えていた。

本時の板書

 中間指導で本時のゴールに近づいていた児童の姿を共有した際、「答えに関連する言葉やジェスチャーも使えそうだね」と本時で目指す姿を焦点化することができた。そして、中間指導で共有したことをめあてに付け加え、「ヒントを考え、いろいろな言葉やジェスチャーを用いて絵クイズをしよう」とめあてを進化させた。
 これにより、児童は自らの目指すべき姿をActivity2 で意識化することができた。実際にActivity2 ではジェスチャーを用いるなど、Activity1 からの変容した姿が多く見られた。

4 おわりに

 これらの授業実践の中で、児童が主体的にやりとりを行おうとする姿、相手意識をもち、どう伝えればよいかを考えていく姿など変化が見られた。だが、やりとりの質、外国語を活用しようとする力を十分に育めているとは言い難い。実践での工夫をもとに、育成すべき資質・能力を育むための授業改善に引き続き取り組んでいきたい。


教育時報『私の工夫』令和2年4月号で紹介された実践です


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