【私の工夫】「対話的な学び」に焦点をあてた授業づくり~根拠を示して討論しよう~
津山市立一宮小学校 指導教諭 國米 敏美(所属・職名は執筆時)
1 はじめに
子どもたち一人一人にとって、学びが深まりのあるものになるためには、学習に主体的に取り組むことや、友達と対話し協力し合いながら協働的に学習に取り組むことが大切である。
本校では、令和元年度から研究テーマを「聴き合い・伝え合いよく学ぶ子どもの育成」とし、話し合い活動を通して、児童の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業づくりに取り組んでいる。
また、「対話的な学び」としての話合いを充実させるために、全校で次の内容を共通理解し、授業に取り組んでいる。
①各学年で考えた「話合い活動のPDCAサイクル」を活用する。
②児童一人一人が自分の考えを持って話合いに参加することができるように、自分の考えをノートに書いた後、発表させるようにする。
③自己の考えを広げ深めることができるように、ノートの記述をもとに、ペアやグループで話合い活動を行う。
児童の主体的・対話的で深い学びを目指す授業づくりの中でも、今回は「対話的な学び」に焦点をあてた授業づくりについて紹介する。
2 根拠を示して討論しよう
学習指導要領(平成29年告示)解説 社会編「指導計画作成上の配慮事項」の中で、「対話的な学びの実現については、学習過程を通じた様々な場面で児童相互の話合いや討論などの活動を一層充実させることが求められる。」と記されている。
そこで、「対話的な学び」の実現に向けて、「討論」の形態を取り入れた授業づくりに取り組むことにした。
実践事例 六年 社会科
討論では、次の点に重点を置き実践に取り組むことにした。
①自分との対話
自分の考えを明確にしたり、考えを整理したりするために、討論に入る前に自分の考えをノートに書くことにした。「書く」ことで、課題の解決に向け自分に問いかけたり、新たな考えや問いを見つけたりすることができると考えた。
②根拠をもとにした考え
自分の考えを述べる際には、互い(自分と他者)の考えを比較することができるように、考えのもととなる根拠や理由を示すことにした。考えの根拠や理由を持つことが難しい児童には、既習の学習内容や歴史的な背景などを示した「考える視点」を提示した。
③他者との対話
賛成、反対だけにこだわり感情的な話合いにならないように、次の点に留意しながら討論を進めた。
・深まりのある討論にするために、同じ考えを持つ者同士で意見の交流を行い、説得力のある理由をグループで考える。
・互いの考えの相違点や類似点について、根拠をもとに討論を進める。
④「対話的な学び」を促す机配置
対話的な学びを行う際、互いの顔が見えることはとても重要な要素となる。相手の表情や反応を見ることで、相互のコミュニケーションをさらに深めることができると考え、机を「コの字型」に配置することにした。
3 対話的な学びから深い学びへ
討論では、自分と同じ考えをうなずきながら聞いたり、友達の発言の内容に心を動かされ、自分の考えを変えるかどうか揺れ動いたりしている児童の姿が見られた。
A児は、学習のはじめ開国の理由に「外国の軍事力の強さ」のみを挙げていた。しかし、討論を進めていくうちに、開国の理由を「外国の文化が入ってきて国が発展するから開国をした方がよい」とさらに考えを深め広げる様子が見られた。
討論の授業を通して、一人では生み出せなかった考えを思いついたり新たな考えも構築したりするなど「対話的な学び」が「深い学び」へとつながっていったと考えられる。
4 違いを認め合える学級づくり
討論の授業を通して、対話的な学びには学級づくりが大きく関わっていることを強く感じた。活発な話し合い活動を行うためには、学級の中での人間関係づくり、つまり互いを尊重し合える学級の風土が大切である。子ども同士が、互いを受容し合う温かい雰囲気の学級があってこそ、自分の考えを友達に伝えたり、受け入れたりすることの楽しさを感じることができ、対話的な学びができると考える。
5 成果と課題
討論の形態を授業に取り入れたことは、「対話的な学び」を促し「深い学び」を実現する上で有効であった。今後は、「対話的な学び」から「深い学び」へつながっていくように、一人一人の学びが、「どのように深まったか」あるいは「どの程度深まったか」を把握するための評価活動について模索していきたい。
『教育時報』令和3年8月号「私の工夫」で紹介された実践です