【私の工夫】教育におけるクラウドサービスの活用 ~教育のデジタル化とDXに向けて~
県立高梁高等学校 指導教諭 西村能昌(執筆時)
1 はじめに
GIGAスクール構想により、高速大容量の通信ネットワークを活用した教育クラウド環境や、児童・生徒1人1台端末など、充実したICT環境が整備されてきた。本校では、事務職員と県教育ヘルプデスク(現教育情報化推進室)の支援のもと、令和元年からGoogle Workspace for Educationを導入し、授業での活用や校務での活用など、教育のデジタル化とDXに向けた取組を行ってきた。ここでは、授業と校務での主な取り組みを紹介したい。
2 授業での活用
新学習指導要領では、「個に応じた指導」を一層重視し、指導方法や指導体制の工夫改善により、「個に応じた指導」の充実を図るとともに、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整えることが示されており、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ることが求められている。
●オンライン授業
新型コロナウイルス感染症予防等により登校できない児童・生徒のため、授業を配信するなど、学習機会を確保することが求められているが、Google Meet等のオンライン会議システムを利用すれば、比較的手軽に授業を配信することが可能である。(図1)
●質問フォーム
生徒が疑問点を気軽に質問したり、オンライン授業後に自宅から質問をしたりすることを可能にするため、Googleフォームを用いて「質問フォーム」を作成し、個々の生徒の質問への対応を行った。質問の回答は、複数の数学教員が登録されているGoogleクラスルームを通じて行うことで、質問を共有するとともに、生徒と教員の一対一のやり取りにならないよう配慮した。(図2)
●授業ログ
毎回の授業の記録を動画や板書写真としてGoogleクラスルームに保存していくことで、授業の振り返りや、欠席者への対応を行うことが可能である。また、自身の授業の振り返りにも活用でき、授業改善にもつながる。(図3)
3 校務での活用
校務においてもGoogle Workspaceを活用し、従来、あたりまえのように行っていた業務を見直し、校務の質的・量的改善に取り組んできた。
●会議資料のペーパーレス化
Googleドライブ上で資料を共有することで、印刷、製本の時間と費用を抑えることができる。また、保存された資料の文字検索を行うことで、特定の文字列を含む資料を瞬時に表示することが可能であり、利便性が飛躍的に向上する。職員会議資料などのように、配付資料の内容に大きな変更はないが、個々で書き込みが必要な資料は、PDFファイルを配付して会議を行っている。一方で、年次会議や課会議など、意見を出しながら協議して決定事項を作り上げることが多い会議は、Googleドキュメントを用いて会議資料を共有し、参加者が共同編集で同時に書き込みを行い、コンセンサスを得るようにしている。
●ポータルサイトの作成
職員朝礼の際、教職員や生徒への連絡事項、行事予定を一覧できるポータルサイトを、Googleサイト使用して作成し、本年度から運用を始めた。(図4)関連する資料や写真、ホームページへのリンクも自由に添付でき、多くの情報を容易に全体で共有することができるとともに、時間短縮かつ伝達ミスの減少にもつながる。生徒への連絡事項は、各クラスのGoogleクラスルーム上の資料と連動させており、登下校中や自宅でもスマートフォン等で確認可能である。
4 活用を進めるにあたって
学校全体での活用を進めるにあたっては、校内研修などで各教科の取り組みを共有するなど、その有用性を認知してもらうことが大切である。特に、校内の運営委員会など、コアとなる教員が参加する会議をペーパーレス化することが、学校全体のクラウド活用につながり、その結果、業務改善や働き方改革に結びつくと考える。セキュリティポリシーの遵守や著作権、公衆送信権、肖像権、家庭のネットワーク環境の整備依頼など、配慮すべき点は多々あるが、まずは取り組んでみることが重要であると考える。
5 おわりに
国立教育政策研究所が公開している「2018 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)補足資料」によると、携帯電話を含むデジタル機器を学習用途で使用している割合は、 OECD諸国の中で我が国が最下位であり、危機的な状況であった。一方、新型コロナウイルス感染症という未曽有の危機に見舞われたことにより、フィジカル空間からサイバー空間への移行が劇的に進展し、個々人の生活様式を変えるほどの大きなパラダイムシフトが発生した。社会のあらゆる場所でICTの活用が日常のものとなっている現在、未来を生き抜く力を育み、児童・生徒の可能性を広げる場所である学校には、時代が求める教育を行っていく責務がある。今後も教育のデジタル化とDXに向けて取り組みを進めていきたい。
『教育時報』令和4年1月号「私の工夫」で紹介された実践です