【私の工夫】ICT機器を活用した食育の取組~効果的な動画の活用~
県立岡山西支援学校(執筆時) 栄養教諭 川上 啓子
1 はじめに
食に係る栄養教諭の立場から、児童生徒には親子で食育に向き合ってほしいと常々考えていたところ、昨年4月、新型コロナウイルス感染症の拡大により緊急事態宣言が発出され、休校を余儀なくされた。
本校では、児童生徒の学びを保障するため、動画配信やカリキュラムの工夫、ⅠCT機器の整備、活用等の取組を総合的に推進する教職員による「学びを止めるなプロジェクト」を立ち上げ、休校中に家庭学習を強いられている児童生徒のため、学校を上げて動画配信が始まった。そこで、親子で食育に向き合うよい機会になるのではと考え、動画による食育に取り組むことにした。
2 動画教材について
実践にあたって、動画教材の特徴について自分なりに整理した。
動画のメリットとして、視覚・聴覚に訴えかけることができるため、児童生徒の興味関心を引き付け、心が動く教材を制作しやすいことが挙げられる。一方、動画教材では対話することができないため、一方的な情報提供にとどまり、情報量が過大になりやすいことがデメリットになる。そこで、動画教材作成にあたっては、児童生徒が主体的に考えられるような工夫を大切にしながら、いくつか実践を行った。
3 実践事例
(1)家庭で取組める調理動画~休校中でも「学びを止めるな」~
休校中、家で過ごす時間が増えた児童生徒が保護者と一緒に調理を楽しむことで、調理をする喜び、家族に食べてもらうことの喜びを感じてほしい、そして、保護者にも食育に関心を持ってほしいとの思いから、動画を作成した。
知的障害のある児童生徒がイメージしやすいよう、給食時間におしぼりを巻いて、ケースにしまう児童の姿を思い出し、日頃から行っている所作を取り入れた「豚肉まきまきカレー味」を動画にした。大根を豚ばら肉で巻いてカレー味にしたものである。
動画作成では一般的な料理番組のように調理に特化したものではなく、生活に役立つことを目的に、手洗いから盛り付けまでの一連の動作を動画にした。
実施後、児童生徒や保護者から動画についてたくさんの感想が寄せられた。中には動画を見ただけでなく、実際に調理をした人もいて、多くの人が関心を持ち、動画に触れたことで家庭に取組が波及したと感じた。
(2)岡山の良さを再発見~全国学校給食甲子園への挑戦~
岡山県は、地元食材に恵まれた豊かな地域である。児童生徒にぜひ岡山の良さを知ってほしいとの思いから、全国学校給食甲子園にチャレンジすることにした。学校給食甲子園は、食育や地産地消を支える学校給食への理解を目的に給食の献立を競う大会である。決勝戦では、全国の12校が食育授業を動画配信で発表した。子どもたちの興味関心を引きつけるため、情報伝達型の発表が多かったが、授業展開を説明型ではなく、クイズ形式にし、児童生徒が楽しみながら主体的に考えられるよう工夫した。
また、学びを生活に生かすため、まとめを次のように工夫した。
食育授業動画は、「わかりやすい」「おもしろい」などの感想が多かった。これからも、「主体的に考える構成」という視点でコンテンツを作成していくことは重要であると考える。
4 おわりに
今まで、家庭への発信は、「食育だより」の発行が主な手段であったが、動画を配信することで、家庭との新しい関わり方を見出すことができた。また、動画のメリットを生かし、デメリットをカバーすることで、様々な場面での動画の活用による、食育の指導の仕方の幅が広がった。
今後も、動画の効果的な活用について研究し、工夫を重ねることで、幅広い食育を展開していきたい。
『教育時報』令和3年6月号「私の工夫」で紹介された実践です