【私の工夫】自分の思いや考えをもち、進んで表現する子どもの育成~NIE教育の実践を生かして~
笠岡市立城見小学校 教諭 淺野 麻衣子(所属・職名は執筆時)
1 はじめに
学力調査や児童アンケートの結果によると、本校には、書くことを苦手とする児童が多い。また生活面でも、自分の考えを言葉で相手に伝えたり、相手の思いや考えを感じ取ったりする力が弱い。
そこで、NIEを生かしながら学力の向上、特に国語科での「書くこと」の力を付けていくことを全学年で取り組んだ。
2 実践の内容
(1)環境作り
まず、語彙力を育てることが必要であり、新聞に目を通してたくさんの言葉に触れることが、大変有効であると考えた。
そこで、校内に新聞コーナーを2箇所設置した。各社の新聞記事を読み比べできるように置き方を工夫したり、新聞クイズコーナーを作ったりして児童の関心が高まるようにした。さらに、委員会活動で作った新聞や新聞への児童の投稿で掲載された記事を掲示した。また、各教室内に、NIEコーナーを設置し、友達の考えや作品をみんなで共有できるようにした。
(2)実態把握に基づく計画作成
朝学習でのNIEタイムや朝の会のスピーチなどで新聞に親しみながら学力向上を目指した。授業でも効果的に新聞を取り入れ、子どもたちの思考力、判断力、表現力を高めようと試みた。
そこで、各学年で、NIEタイムの計画や国語科の「書くこと」の系統表を作成し国語科の授業の中でどのようにNIEの取組を生かせるか検討し、系統立てて学力を付けていくことができるようにした。
朝学習では、計画を元に、週に一度、NIEタイムを行った。朝の会のスピーチでは、新聞記事を自分の考えとともに紹介し、情報を取捨選択したり、それに対する自分の考えを表現する力を身に付けたりした。さらに、月に一度全校児童が同じ記事で、自分の意見や感想を字数制限内で書く活動を行った。また、お家の人にも新聞記事に対する意見をもらい、それらを元に、友達と話し合い活動もした。このような実践を「NIE通信」に載せ、保護者や地域の方に紹介したり、「新聞コンクール」に応募したりした。
(3)授業作りにおける工夫
①指導案作成
書く力のゴールを明確にするために、指導案には、めざす具体的文章のポイントを入れ、教科書の例文とは別に、指導者がモデル文を作成し、載せるようにした。それにより、教師が児童のつまずきを予測してその手立てを考えることにつながった。また、授業の導入で、モデル文を児童に示す事で、児童も「自分もできそうだ・やってみたい」という意欲につなげることができた。
「新聞をつくろう 光村図書4年」では、相手に伝えることを想定して、限られた紙面で新聞を作る活動を通して、読み手を意識した言葉の使い方や構成の仕方などを身に付ける活動を行った。
新聞作りでは、インタビューやアンケート、取材はグループ単位で行い、新聞は一人一枚作ることにした。「書く→アドバイスをもらう→書く」といった流れのスモールステップで全児童が無理なく仕上げることができるようにした。
②興味喚起・意欲の保持
導入では、自分が生まれた日の新聞の一面を保護者や友達と一緒に読んで交流した。動機付けになり新聞作りに意欲をもつことができた。
全校児童が、「『さん太号』出前授業」を受けたり、「さん太しんぶん館」に行って学んだりする活動を入れた。
③指導と評価の一体化
「何を・いつ・どのように学び・どこを評価するか」を明確にするために、学習計画とその時間に付けたい力を教室掲示して児童と共通理解した。児童には、単元全体が見られるように一枚のシートに、「学習活動・めあて・まとめ・振り返り」を記入できるようにした。
④学習形態
一人で考える時間の確保
ペア学習
話し合いの観点を明確にし、児童が、何か「得られた」「改善点が見付かった」といった実りのあるものにした。
グループ学習
話し合いの観点で書き込むワークシートを用意したり、それぞれの役割「司会・発表者・記録者」を決めたりして、明確にした。
ワークシートの工夫
伝えたいことの中心を明らかにして書くことと、限られた文字数で書くために、自分が伝えたい重要度を書き込むことができるようにしたり、文字数が一目で分かるものを用意したりした。
(4)まとめ
取組の結果、全校児童は、書くことへの苦手意識が減った。
実践では、朝会での先生の話や、集会や運動会にまで、新聞を取り入れた。全教職員で取り組むために、研究便りで、研修や研究の方向性をその都度確認し、進行状況の見える化も行った。
この実践を通して学んだことは、多くの方と関わり合いながら楽しくそして互いに高め合いながら研究していくよさである。全教職員で一丸となって取り組み、さらに、保護者や地域の方に協力していただく中で、子ども一人一人の力が育っていくことを実感した。
今後、情報化社会が進む中で、児童が、正しい情報を読み取り相手にわかりやすく発信できる力を付けていきたい。ワンチームで楽しみながら。
『教育時報』令和3年5月号「私の工夫」で紹介された実践です