【私の工夫】「倉工スタンダード」を軸とした「資質・能力」の育成~ルーブリックを活用した授業の実践~
県立倉敷工業高等学校 主幹教諭 髙田 国宏(所属・職名は執筆時)
1 はじめに
本校は、平成26年度から文部科学省委託事業(後に全国工業高等学校長協会主管)を受け、「工業高校生の専門的職業人として必要な資質・能力の評価手法の調査研究」に取り組んできた。
本校の各専門科ではそれぞれの特性を生かし、学校や地域で多様な学習活動に取り組んでいる。生徒はその活動を通じて、工業人として必要な資質・能力の習得を目指している。
その育成したい資質・能力を示した「倉工スタンダード」を策定し、これに基づいた「ルーブリック」を作成してきた。このルーブリックを活用して授業改善に取り組んだところ、スタンダードに提示した資質・能力要素のそれぞれについて課題が明らかになった。
2 倉工スタンダードの改訂
そこで倉工生として習得すべき資質・能力について、本校の現状や、社会が求める人材に、より沿ったものにするため、新たな検討組織をたち上げ、倉工スタンダードを改訂し、4つの資質と11の能力要素を精選した(図1)。
この新しい倉工スタンダードは、令和2年度から学校経営目標に位置付けられている。これよりそれに基づいた授業実践を紹介する。
3 ルーブリックを活用した授業実践
実践例1《実習での活用》
倉工スタンダードの見直しに伴って新たなルーブリック(図2)を作成した。
主な改善点を次に示す。
〇評価のステップを5段階に設定した。3段階、4段階についても十分に検討・精査を行った。その結果、ステップを小さく刻むことで、生徒がすぐ上の目標を意識しやすくなり、学習意欲の向上が見られた。
〇観点別評価に沿った指導項目を設定し、それに対する評価項目を明確に示した。
〇生徒による自己評価、感想、自己分析の記入欄を設ける工夫をした。
以上が主な改善点である。
実習の報告ではレポート、ルーブリックを提出させている。
提出時には、学んだことや、自己評価についてヒヤリングをして、学習の確認にも役立てている。
また、授業で活用したルーブリックや、レポート、成果物をファイリングすることで、ポートフォリオ評価とし、学習の振り返りもできる。そのことで、次の活動ローテーションで実習に来たときには、生徒の学ぶ姿勢の変化と意欲の向上が見られた。
実践例2《タブレット端末の活用》
実習などの実技が主体の授業では、従来のように教務手帳を用いる方法では、リアルタイムに生徒の活動の様子を記録することは困難である。一覧表形式の教務手帳では、該当生徒を捜すだけでも大変であると同時に、行や列がずれると評価ミスにもつながりかねない。また、各生徒の評価シートを作成しても、そのシートをめくる必要があり活用しづらい。
そこで、タブレット端末を使用することで、これらの問題が解決できるものと考えた。
タブレット端末の表計算ソフトを使い、生徒の顔写真入りの評価入力シートを準備する(図3)。指導者はタブレット端末を持って、机間指導を行いながら生徒の活動を確認し、その場で画面をタップすることで評価を入力する。入力したデータは転記の必要もなく、すぐに集計することができる。
また、タブレット端末のカメラ機能を使い(図4)、実習中の活動を画像(静止画、動画)に残すことで、生徒のパフォーマンスや作品の仕上がり等、評価に関して重要な要素を、繰り返し確認できる。このことは、評価の妥当性、信頼性の向上に繋がると考える。
さらに、撮影した画像を、各実習室に設置されているプロジェクターを使い、スクリーンで確認することで、安全教育や実習方法の点検や見直しにも役立てることができた。
なお、実習中のタブレット端末の活用は、生徒の安全確保に資することが最優先であることは言うまでもない。
このタブレット端末の活用は、「GIGAスクール構想」実現の一助となることが期待される。
4 おわりに
今回は、倉工スタンダードに基づいた、ルーブリックを活用した評価の作成から、それを取り入れた授業実践の一例を紹介した。
この実践を基に、工夫・改善を図りながら、今後も指導と評価のPDCAサイクルを確実に回すことが重要であると考える。
そして、生徒のキャリア形成に向けて必要な資質・能力の育成を図っていきたい。
『教育時報』令和3年1月号「私の工夫」で紹介された実践です