【私の工夫】国語科における主体的・対話的で深い学びの実現に向けて~「書くこと」~
井原市立美星中学校 教諭 花房 美穂(所属・職名は執筆時)
1 はじめに
本校の令和3年度の研究テーマは、『学び合いを通して「わかった」「できた」「考えた」が実感できる授業づくり』である。生徒の考えや学びの変容について授業中の様子や発言、ノートの記述など様々な場面で見とることができるが、単元ごとの振り返りシートを活用することで、より明確に一人ひとりの学びの変容が分かるようになってきたと感じている。現任校には赴任して3年目になるが、初年度から「書くこと」における授業作りに力を入れてきた。今回は「書くこと」に重点を置いた授業実践を紹介し、自身の授業を振り返り、考察する。
2 実践事例
どちらの実践も単元の最初に学習のねらいや進め方をつかませ、まとめの活動内容について生徒に見通しをもたせたうえで授業を進めた。
(1)第一学年の取組
ポップ作りについて
教材名:『大人になれなかった弟たちに……』
作品の当時の時代背景をおさえたうえで、まず百字程度に感想をまとめさせ、最も印象に残った一文とその理由を書かせた。どちらも個人で書かせたあと、グループで読み合い、質問をし合ったり、参考になったものについて自分のワークシートにメモをさせたりした。全国学校図書館POPコンテストの受賞作品を示すことで、ポップの役割や作り方について生徒は理解しやすかったようである。その際、イラストが目を引く作品だけでなく、書かれている言葉が目を引く作品も示すことで、絵を描くことが苦手だと感じている生徒にとっても取り組みやすくなるようにした。『大人になれなかった弟たちに……』を読んだことがない人に向けてのポップを作るという設定で、ポップに書き込む言葉は事前に書いた感想や印象に残った言葉をもとに書かせた。完成したポップの下に、「ポップを作るにあたって工夫したこと」「ポップで表現したかったこと」について書かせて作品を見せながら交流し、お互いにアドバイスやコメントをさせた。
ポップに書く言葉を厳選していく中で自分と他の人の考えを比較し、作品の主題や作者の思いに迫ることができた。また、字体や配置など表現の仕方を工夫してポップ作りをすることができた。今回は戦争教材だったが、自分の好きな本や、異なるジャンルの本のポップを作ってみたいと意気込む生徒が多かった。
(2)第2学年の取組
リライト作品作りについて
教材名:『盆土産』
リライト(文章を読んで、目的に応じて創造的に書き換えること)については1年生の『少年の日の思い出』の授業の際に一度取り組んでいたので、見本は示さなかった。この単元では、主人公以外の父、姉、祖母の中から一人を選んでリライトすることとした。作品の表現や会話の言葉遣いなどから、時代背景や舞台となっている場所、それぞれの登場人物の性格について考えさせ意見を交流させた。リライトする人や場面を自由に選ばせたり、教科書には書かれていないセリフを加えさせたりすることで、リライト作品の自由度が広がったと考える。
異なる教材で同じ言語活動を行うことで、以前の生徒の取り組み方や作品と比較することができた。また、互いの作品を読み合いコメントを書き、伝え合うことで他の人から評価を受ける嬉しさや表現することの楽しさを一層生徒が感じていたと思う。登場人物の言動から、性格やその時の心情を想像することは、小説の読み取りにおいても生かすことができると考える。
3 おわりに
この二つの実践において、生徒は自分と他の人の考えを比較しながら、教材に向かい合うことができていた。授業の中で生徒同士の学び合いをするタイミングを多く設けているが、その際の机間指導がとても大切だと考える。生徒と対話をしたり、他の生徒につなげたり、全体で共有したりと、生徒のつぶやきや疑問を見逃さないようにしていきたい。授業を作るうえで、ついつい自分が話しすぎたり、多くのことを一つの単元に盛り込みたくなったりしてしまう。しかし、焦点を絞り、この単元で生徒にどのような力を身につけさせたいか、そのためにどのような言語活動を設定しようかということを今後も考え続け、生徒と一緒に国語を楽しみながら学べるように邁進していきたい。
『教育時報』令和4年2月号「私の工夫」で紹介された実践です