【私の工夫】タブレット端末を活用した英語による言語活動~タブレット端末×生徒の創造力=学びの広がり~
倉敷市立倉敷第一中学校 教諭 岡田 三枝(所属・職名は執筆時)
1 はじめに
来年度から実施される新学習指導要領においては、「言語能力」とともに、「情報活用能力」が学習の基盤として新しく位置付けられた。
現在倉敷市では、文科省のGIGAスクール構想を受け、またコロナ禍の中、「個別最適化された学びの場」の提供を目的に、1月以降1人1台のタブレット端末支給の準備が始まり、学校現場においてもその有意義な活用が求められている。
そこで、教科書の単元教材をベースにした言語活動において、従来のICT環境に加えて生徒個々のタブレット端末を活用することによって「主体的・対話的で深い学び」に向かう授業実践を紹介したい。
2 英語学習の目標と自己表現活動
英語の教科書では平和・人権・環境・民族・異文化理解など、生徒の「今日的世界観」を広げる題材が多く扱われている。したがって、英語教育は単なるコミュニケーションツールの習得だけでなく、授業での新たな学びから生まれる自らの考えや思いを表現するコミュニケーション能力を育てるものだと考える。
そこで、日々の授業実践では特に、英語の4技能を統合的に活用する自己表現活動に力を入れてきた。例えば、広島の原爆投下を扱った単元では、総合的な学習で取り組んだ長崎平和学習も生かしながら、世界へのメッセージ発信を想定して、戦争・平和・核兵器をテーマにグループ内でスピーチした。また、キング牧師を扱った単元では、大坂なおみ選手や八村塁選手の勇気ある言動を紹介しながら、非白人に対する人種差別問題という観点から、課題解決のメッセージをプラカードで示し、痛みを共有する表現活動を行った。
3 タブレット端末を活用した言語活動
(1)インターネットの検索サイトを活用して
教科書の題材「行きたい場所とそこでしたいこと」と「日本文化の紹介」において、生徒一人ひとりが自由にタブレット端末を活用してプレゼンテーション形式の言語活動に取り組んだ。多くの生徒がスピーチに必要な画像だけを取り込むだけではなく、インターネットの検索サイトで収集した情報をスピーチ原稿に盛り込んでいた。また、英語の苦手な生徒が語句の意味だけでなく、実際に発音を調べ、スピーチに生かそうとしているひたむきな姿も印象的だった。
ひとたび、インターネットに接続すれば、そこには無限の情報が広がり、たった1枚の画像からでも、伝えられる視覚情報は飛躍的に増大する。と同時に、膨大な情報を取捨選択し、わかりやすく伝える能力が問われてくる。さらに、伝えたいと思う内容が増えれば、それだけ単語や文法も必然的に活用していこうと生徒は自ら考え始める。その瞬間にこそ、英語学習へのモチベーションがアップし、「情報活用能力」と「主体的な学びに向かう意欲」が高まると実感した。
(2)「ロイロノート・スクール」を活用して
プレゼンテーション形式の言語活動には、倉敷市が導入している学習用アプリケーション「ロイロノート・スクール」を活用している。
最初の「行きたい場所とそこでしたいこと」は、画像の提示だけによるプレゼンテーションだったが、生徒の振り返りの中に、スピーチと画像提示のタイムラグへの気付きや、より効果的な画像提示に向けた改善点等が挙げられていた。そこで、2回目の「日本文化の紹介」では、提示する画像の中に文化の名称を挿入するなどの工夫を助言し、取り組んでみた。すると、表題を自分なりにアレンジしたり、ブランクのページを使ったり、スピーチ原稿の一部を視覚効果として表示したりと、活用技能に格段の向上が見られた。
どちらのプレゼンテーションにおいても、生徒の創造力の進化には目を見張るものがあり、生徒は互いの発表を通してクラスメートの意見やユニークなアイディアに触れ、「対話的な学び」につなげることができた。
(3)その他
タブレット端末には多くの便利な機能が搭載されている。互いのスピーチ音声を録音し合い、発音の相互チェックを行うことができ、生徒の主体的な学習にもつながった。
4 おわりに
英語は近代以降、世界の人々をつなげる普遍的なコミュニケーションツールとなって久しい。一方、インターネットは現代社会において、我々と未知の世界をつなげる情報獲得・伝達ツールとなった。ゆえに、英語教育においては授業者によるタブレット端末活用事例の研究や活用技能の向上が、生徒の英語学習へのモチベーションの高まりにつながると同時に、生徒の「主体的・対話的な深い学び」を促すものと確信している。
これからも生徒とともに、言語活動におけるタブレット端末の活用のあり方を模索し、互いの考えや思いをフランクに発信し合える一教師でありたいと思う。
『教育時報』令和3年3月号「私の工夫」で紹介された実践です