【私の工夫】子ども達が協働的な学びをできる授業づくりの工夫~「学び合い」で味わう、集団で学ぶよさや楽しさの積み重ねを通して~
津山市立高野小学校 指導教諭 柴田 恵梨(所属・職名は執筆時)
1 はじめに
本校では、学習指導要領及び学校教育目標、児童の実態をふまえ、本年度の研究テーマを『他者と協働する学びができる子どもの育成』~主体的・対話的で深い学びを創る指導の工夫~としている。
現在、コロナ禍で、私たち自身が未知の課題に直面しており、「いかに安心・安全な教育活動を行うか」全職員で知恵を出し合い対応している。
児童が成人する頃には、さらに予測困難な課題が生じ、厳しい時代になると考えられる。その時代に、他者と協働しながら課題を解決し、たくましく時代を切り拓いていくという姿を目指して、「今、自分達には何ができるか」と自問しながら指導に当たっている。
2 協働的な学びに向けて
本校では、「協働」という言葉を「課題解決に向け、力を合わせて働く」と解釈し、児童がそのような学びのよさに気付けるよう、次の二つの具体的活動が大切と確認し、取り組んでいる。
①表現する
自分の考えを、書いたり発言したりして、相手に伝える。
②反応する
聞き手が、感嘆言葉や言葉、行動等で反応をする。
聞き手が「同じです」などと一斉に言うのではなく、感じたことを自由に表現することで、話し手は「自分の発言を聞いてくれている」と、安心感を得るようである。年度当初、児童達と「どんな反応をされたら嬉しいか」を考え、出された意見を教室に掲示した。
本稿では、「表現する」「反応する」を意識させ、児童が「学び合い」を通して考えを広げ深める、集団で学ぶ楽しさを味わえるように、工夫した実践を紹介する。
3 子ども達が「学び合い」を通して、集団で学ぶ楽しさに気付くために
①見通しをもつ
既習事項の「比例の定義」と「比例の性質」が「比例しているかどうか」を判断する際の根拠となる。そこで、導入では、教室掲示を用いて、算数用語を使いながら既習事項を想起させる。話し手が発言し、聞き手は反応をする。「確かに」「付け足します」等、ハンドサインも活用し様々な反応をする。
次に、具体物を示し、問題文を読む。下線や波線を引き、「大切だと思うこと」や「問われていること」を意識させる。
そして、既習事項との違いや課題解決に活用できそうな考えなどを出し合い、見通しを全体で確認する。
全員が、自力解決時に考えを持てるようにする工夫である。
②学び合い
自力解決後、ペア交流をする中で、担任は2~4人の考えを選び、ホワイトボード(以下WB)に自分の考えと名前を書かせる。
次に、児童達は机を少し後ろに下げ、全員黒板の前に集まり座る。
そして、担任が1枚のWBを黒板に貼る。すると、児童達は、「Aさんは、はどんな解き方をしたのだろう。」と一生懸命考え、推測できたら挙手し、日直にあてられ、説明する。この時も児童達から、「おおっ」や拍手などの反応がある。その後の質問や付け足しなどの指名は発言した児童がリレー形式で指名していく。
その他の考えも同様に、進めていく。
この「学び合い」には、多くの利点がある。児童の利点は、①思いつかなかった解き方を知ること。②WBと板書、話し手のみに集中できること。③自力解決できなかった場合も、友達の説明により理解できることである。児童の説明の方が、小難しくならず分りやすいようだ。教師の利点は、①意図的な提示ができること。②取り扱いたい考えを、落ちや重なりのないように取り上げられること。②はタイムマネジメントに大変有効である。
③学びを深める問題
適用問題で、皆の考えにずれが生じた。ずれの正体は何かと、友達の説明を一生懸命聞く児童。ずれの正体が分かったところで、「ほんまじゃ」「そういうことか」との反応があった。この問題を通して、示された2つの数量は部分だけではなく全体を見て判断しないといけないと、多くの児童が学びを深めた。
④ふりかえり
ペアで交換し、児童は、いいなと思ったところに下線を引き、返す。このことで児童は、内容や書きぶりへの新たな気づきや友達に認めてもらった喜びを感じられると考えている。
4 終わりに
本稿のような授業を、年度初めから児童の実態に合わせ、取り組んできた。高学年は発言数が少なくなることもあるが、課題解決に向け他者と対話や協働ができる大人を目指すには、日々の授業において集団で学ぶよさや楽しさを味わう経験を積み重ね、自分の考えを表現する力や他者の意見を聞く力を伸ばしてほしいと思う。そのような授業づくりを目指し、学習集団作りや教材研究など、精進していきたい。
『教育時報』令和4年6月号「私の工夫」で紹介された実践です