【私の工夫】特別支援学級での1人1台端末の活用

倉敷市立長尾小学校 教諭 片岡 暁子(所属・職名は執筆時)


1 はじめに

 ICTを活用することは、特別支援学級の児童にとって、一人一人の状態や認知特性に応じた学びが可能になり、個々の子どもの抱える困難さのサポートができるツールの一つであると感じている。GIGAスクール構想が始まり、今年度から1人1台端末が使える環境で、どのように活用していくかを考えながら学習を進めている。ここでは、四月からの1人1台端末を使った学習の取り組みについて紹介したい。

2 取り組みの様子

◯一人一人に応じた環境設定
 まず、初めに、個々に合わせてユーザー補助機能の設定をした。例えば、読み書きが苦手な児童に対して、「音声入力」や「音声読み上げ」などの機能がある。この機能を設定することにより、読みに困難さがみられる児童にとってのストレスが軽減され、学習に集中することができ、内容の理解にもつながった。
 他の児童たちにも、学年や実態に応じて、入力方法など一人一人に合わせた環境で使用できるように設定した。

◯「Google Classroom」を使った学習
 「Google Classroom」を使って事前に資料やワークシートなどを配付しておくと、児童は、それぞれの端末で課題を開いて活動することができる。端末で操作することで、机上が乱雑になることなく、物が落ちたり、他の物に気を取られたりする心配もなくなるため、巧緻性に乏しい児童や片付けの苦手な児童も集中して学習に取り組むことができた。個々に合わせた課題の配布もでき、自分から学習に取り組む姿も見られた。また、教師の準備時間の軽減にもなった。

「Google Classroom」で授業を選んでいる様子

 例えば、3年生の理科では、観察カードを「Googleドキュメント」や「Googleスライド」で作成して「Google Classroom」で配付した。絵を描くことや書字が苦手な児童もカメラ機能でホウセンカを撮影し、文字を入力することで、それまで観察カードを書くことを嫌がっていた児童が進んで活動に取り組むことができた。観察したカードは、「Google Classroom」を通じて教師へ提出させた。児童のもとにも、データは残るので、あとから見直すこともできた。また、「Googleフォーム」で振り返りや小テストなどを作成して配付しておくことで、活動が早く終わった児童から取り組むことができ、時間を有効に使うことができた。選択式の小テストは、学習が苦手な児童も選んで答えるだけなので抵抗なく取り組むことができた。また、何度でも挑戦できるようにしておくことで全問正解になるまで繰り返し挑戦する様子も見られた。

◯「Jamboard」を使った教材作り
 「Jamboard」は、電子ホワイトボードの機能をもち、一つの画面で共同作業ができるツールである。「Jamboard」は画像を指で自由に動かすことができるので、今までカードやプリントで作っていた教材を「Jamboard」で作れないかと考えた。
 例えば、ものやパーツを移動させる活動として、「熟語の組み立て」や「漢字パズル」などを作成した。指でパーツを移動させるだけなので、書字の苦手な児童もゲーム感覚で楽しく取り組むことができた。画像は、回転したり、大きさを変えたりすることもできるので、6年生の算数科「拡大図と縮図」では、もとになる図形を動かしながら、形が同じ図を調べることができた。

「熟語の組み立て」で熟語を作っている様子
6年生の算数科「拡大図と縮図」
図形を動かしながら,拡大図と縮図を調べている

 また、今までの漢字練習では、字やマスの大きさを考えてプリントを準備する必要があったが、「Jamboard」では、なぞる文字や枠の大きさを自分で自由に変え、練習することができ、漢字練習になかなか取り組もうとしなかった児童も少しずつ自分から練習ができるようになってきた。

漢字練習に取り組む様子

3 おわりに

 特別支援学級の児童にとって、改めてICT機器を使った学習支援の有用性を感じた。1人1台端末を活用することで、個々の困難さに合わせた環境設定ができ、学びへのストレスが軽減され、学習意欲につながった。また、一人一人の興味や関心、特性に合わせたツールや教材の利用が可能になり、特に、「Jamboard」は、児童にとってゲーム感覚で楽しみながら活動できる教材であると感じている。そして、児童一人一人が別々の課題に取り組み、習熟度に合わせた学習ができ、今まで集中力が続かなかった児童も、継続的に取り組む姿が見られるようになった。
 これからも、子どもたちが「楽しい」「もっとやりたい」と感じるような授業づくりに取り組んでいきたい。


『教育時報』令和3年11月号「私の工夫」で紹介された実践です