【私の工夫】主体的な学びにつなげる「分かる」「楽しい」を目指した国語科授業の工夫
岡山大学教育学部附属中学校 教諭 吉藤亨希(所属・職名は執筆時)
1 はじめに
これから紹介する工夫は、前任校である浅口市立寄島中学校で行った実践と工夫である。
意欲的に自分の意見を発表し学習に取り組もうとしている生徒がいる反面、50分間集中できず学習に向き合うことができない生徒がいる。そうした実態の中、全員が「分かる」「楽しい」と感じる授業をしたいという思いで次のような工夫をした。
2 授業の工夫
(1)「今日の学び」(資料1)
1つ目は、「今日の学び」という授業のめあてを示すとともに、学習活動で学ばせたいことを提示することである。授業の最後まで集中できないのであれば、はじめにポイントを示すことで、集中できるうちに、授業の内容を把握できるのではないかと考えた。授業のポイントを短いキーワードで表すことで、その授業の学習内容を焦点化することができ、生徒も何を学ぶのかが分かりやすくなる。さらに、授業をまとめる学習活動の際、「今日の学び」があることで、学習したことを視覚的に想起させることができるようになった。
(2)学習内容と思考の流れが分かる板書(資料2)
2つ目は板書計画についてである。1時間の授業で何を考え、どのようなことを学んだのかを視覚的に分かるよう次のことに気をつけている。
① ラベリングをする。
② ナンバリングをする。
③ 矢印や三点リーダーなどの記号を使う。
④ 抽象的な事柄は上方に、具体的な事柄は下方に書く。
⑤ 自分の考えを書くスペースを空ける。
一般的に、国語科は書くことが多い。生徒が思考を整理するために矢印等を多用したり余白を残したりすることで、授業内容を振り返りをしやすくした。また、自分の考えを書くためのメモ欄を作らせ、自分の考えを自由に記述できるスペースも作らせた。自分の考えを発表するときや教師の言葉をメモしたい時など活用させている。思考の流れや学習内容を整理させながら、自主的なノートづくりを指導していく。
(3)学習活動にゲームの要素を取り入れる(資料3)
3つ目は、学習活動にゲームの要素を取り入れることである。中学校1年生の国語科の学習に、「品詞の識別」がある。名詞、動詞などの品詞を識別する際に、簡単なルールで生徒も取り組みやすい「神経衰弱」を応用する。青色のカードには品詞を、ピンクのカードには単語を書いた2種類のカードを使用し「神経衰弱」をする。机間指導中に生徒から「このカードとこのカードの組合わせは正解ですか?」等の質問を受けた際に、教科書やノートを振り返らせることで、品詞の性質を復習させることも可能である。カードの暗記作業にならないような手立ても必要であるが、生徒が自主的に品詞について復習している姿も多く見られた。
もう一つの学習ゲームは、漢字一字を組み合わせて、熟語を作る活動である。漢字一字が書かれたカードを黒板に貼る。それと同じ漢字が書かれたプリントを配り、組み合わせて熟語を作るというものである。パズルゲームのような活動になり、「熟語の構成」等の学習の導入として行った。必死で組み合わせを考え、グループで話し合いながら正解を導きだろうとする生徒の姿が見られた。さらに、その話し合いの時には、熟語の構成を踏まえながら話を進めているグループもいた。
カードゲームやパズルゲームを学習に取り入れることで、学習意欲の向上を促し、授業の導入や復習に生かすことができる。
3 終わりに
クラスにはさまざまな生徒がいる。中には、学校にいること自体が苦痛だと感じている生徒もいるだろう。だからこそ、「全員が熱中できる国語科の授業」を目指したい、国語を少しでも好きになってほしい、授業の中で達成感を味わってほしいと願いながら工夫してきた。その工夫の根本は、「学習の焦点化」、「学習内容と思考の視覚化」、「学習活動にゲームの要素を取れ入れること」である。これらの工夫は、国語科だけでなく、どの教科でも生かすことができるのではないだろうか。
今後は、国語科を好きにするだけでなく、国語科の目標にもある「読解力」・「表現力」を身に付けるための工夫や指導方法などを研鑽したい。そのために、授業における生徒の反応を予想しながら、教材研究をすることを意識していきたい。そして、「分かる」「楽しい」から、全員が「主体的に学習に取り組む」授業をこれからも追究していきたい。
『教育時報』令和4年7月号「私の工夫」で紹介された実践です