【私の工夫】TPC(タブレット端末)を活用した実験レポートの作成

新見市立新見南中学校(執筆時) 教諭 仲村 陸


1 はじめに

 理科の授業において、実験は生徒の学ぶ意欲を引き出すだけでなく、思考力や表現力を身に付けるためにも大きな役割を担っている。生徒が単に実験をして終わるのではなく、結果を科学的にまとめて考察を書いたり、それらを発表したりすることで、表現力の向上につなげたい。
 新見市では、2014年度から全中学校に生徒・教師用のTPC端末や電子黒板が導入されており、1人1台のTPCを使った授業展開が可能である。TPCを活用することによって、「予想・計画→実験→結果→考察」という実流れをつくることが容易になり、思考力や表現力の向上につなげることができる。ここでは、私が日々の授業で行っているTPCを用いた実験レポートの作成について紹介したい。

2 TPCを活用した実験レポートの例

 まず、TPCで実験レポートをつくることの最大のメリットは、実験の様子や結果を生徒自らが撮った写真を使ってまとめられることだと思う。「neu.Annotate+」というアプリを使うと、ワークシートを取り込んで、そこに文字を入力したり、写真を添付したりすることができる。写真を添付することで実験の経過や結果をより分かりやすくまとめることができる。
 また、レポートに使う写真を撮る過程で、「この実験においてどのようなポイントを押さえるべきか」と考える必要性が生じる。例えば、1年生「物質の区別」の単元では、食塩、砂糖、片栗粉の3種類の白い物質を区別する方法について、実験計画を立てる段階から考える。考察につながる結果を表すには、自分たちが計画した方法のそれぞれの過程が、物質を区別する有効的な手段であることを示すため、それぞれを写真に残す必要がある。それらを自分で考えたり、班で確認したりする中で、科学的な思考力を深めることもできる。「結果を知るための実験」ではなく、「課題を解決するための実験」を行うことができる。

実験レポートの例①
実験レポートnの例②

 次に、作った実験レポートを、全体で共有できることもメリットである。作成したレポートを電子黒板に映しながら、実験の結果や考察を全体でプレゼンテーションすることができる。また、レポートは「Dropbox」というクラウドストレージに提出させ生徒同士で自由に閲覧できる状態にすることで、互いのレポートを容易に見ることができる。例えば、1年生「気体」の単元では、身近なもので気体を発生させ、その気体の正体を調べるために、班ごとに違う実験計画を立てさせて、実験を行わせている。友達のレポートを確認したり、他の班の発表を見たりすることで、自分たちが行っていない実験についても視覚的に理解を深めることができる。また、まとめることが苦手な生徒が友達のレポートを見ることで、結果のまとめ方や考察の書き方を学ぶこともできる。継続的にレポート作成や共有を行うことで、科学的思考に基づいてレポートをまとめる力が向上することも目指している。作成したレポートは、印刷して返却しファイリングすることも可能であるため、ポートフォリオとしていつでも見返して、復習したり自分の進歩を確認したりするのに役立っている。

作成したレポートやスライドを電子黒板に映して発表

 最後に、実験レポートのほかにも、単元全体を通したまとめレポートを作成することが可能である。例えば、2年生「天気」の単元では、「天気図から明日の天気予報をする」というゴールに向け、それを達成するためのツールとして、TPCで「気象予報士ガイド」を作成した。この気象予報士ガイドでは、気象予報をするための基礎知識の習得や天気図を読み取る練習ができることに加え、実際に天気予報をするときに見返して活用することができる。もちろん、紙のワークシートでも同様のことはできるが、TPCを用いることで何度でもきれいに修正したり、図を挿入し移動させ、天気図を並び替えたりすることなどが容易にできる。そして、何よりTPCを使って単元のまとめを完成させるという学びの達成感が得られることが魅力の1つであると考える。

気象予報士ガイド作成

3 おわりに

 このように主にTPCを、実験の結果や考察のレポートや、学びの過程をまとめることに活用している。この3年間、TPCを使ってレポート作成やプレゼンテーションをどの学年でも行ってきた。生徒が授業でTPCを使いこなせるようになるには、地道で継続的な指導が必要だが、TPCは生徒の思考力や表現力を育成するための効果的なツールになっていることも実感している。GIGAスクール構想が進む中で、さらにICTの様々な可能性を探究したい。


『教育時報』令和3年4月号「私の工夫」で紹介された実践です