【私の工夫】児童の意識がつながる授業づくりを目指して〜教師の学び力=児童の学び力〜
岡山市立大元小学校 教諭 林 謙吾(所属・職名は執筆時)
1 はじめに
本校では、令和3年度から研究主題を「考えを表現し合う子どもの育成~児童の意識がつながる授業をめざして~」とし、単元を通して、児童の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業づくりに取り組んでいる。
単元を通して、児童の意識がつながる授業を展開していくために、本校では、以下の内容を共通理解し、授業づくりに励んでいる。
①単元の中で、知識の習得と活用の場面を明確にすること。
②表現の必然性を生む発問を考えること。
③単元を貫く課題を設定すること。
昨年度、岡山市北1区理科部員研修会で授業を公開させていただく機会に恵まれた。授業を考えるにあたって、岡山市教育委員会指導課の佐藤美穂先生にご指導いただき、主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、児童の意識がつながる授業づくりに取り組んだ。その実践を紹介したい。
2 授業実践
単元名 第5学年理科 『ふりこのきまり』
本単元のねらいは、次のとおりである。
①振り子が一往復する時間に着目して、おもりの重さや振り子の長さなどの条件を制御しながら、振り子の運動の規則性を調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身につけること。
②予想や仮説を基に、解決の方法を発想する力や主体的に問題解決しようとする態度を育成すること。
本単元のねらいに迫るために、次のような工夫を取り入れた。
工夫① 科学的な追究を促す単元構想
第1次では、曲のテンポに合う振り子を自由につくる活動を通して『ふりこの一往復する時間は何によって変わるのだろうか』という学習課題を設定した。児童が主体的に問題解決したくなるように第2次の展開に仕掛けを施した。
その仕掛けとは、「糸の長さチーム」「おもりの重さチーム」「糸の振れ幅チーム」の三つの研究チームに分かれて課題追究した後に結果を考察し、考察を基に再度検証実験を行う展開にしたことだ。「糸の長さ」「おもりの重さ」「糸の振れ幅」の条件について全員が同じ実験を一つずつ順番に行わず、分担して一斉に実験する展開にした。当然、児童は他の実験の様子や結果が気になる。児童が他の班の結果を気にせざるを得ない展開をあえて作ることで「他の班の結果はどうなっているの?」「この結果は正しいのかな?」「結果を話し合いたい!」という主体的に問題解決しようとする児童の姿が見られた。
その後、各班の実験結果を持ち寄り、中間評価をした。児童は自然と結果を見比べ、グラフの傾向や数値に着目しながら話合いを始めた。「長さのグラフはどこの班も傾いているから関係していそう?」「重さの実験結果のずれはなんだろう?」「実験方法があっていたのかな?」と誤差について議論したり実験方法について確認をしたりした。このような学習展開や話合いを通して、児童は探究心を抱きながら科学的に追究をしていくことができた。
工夫② 実験結果のリアルタイム共有
工夫①を支える手立てとして1人1台端末の活用を行った。各班の実験結果をChromebook に打ち込むとリアルタイムでグラフ上に平均記録が表示されるように設定した。この結果を見ながら「次はこうなるはずだ!」「ほら、やっぱりこうなった!」という実証性、再現性、客観性を求める姿が見られた。また、実験結果がすぐに反映されることに喜びを感じ、やる気になって次々と実験の回数を増やす主体的な姿も見られた。
工夫③ 教材の世界に引き込む
「ふりこワ~ルドへようこそ」 私たち教師にとって最も大切なことは児童の「やってみたい!」という意欲を引き出すこと。例えば、テーマパークではその世界感が緻密に再現されている。ワクワクしてその世界に引き込まれる。教材も同じようにできないだろうか。今回の実践ではふりこワールドとして、学びの足跡を教室に掲示した。学びを残していくことで、ふりこの学習を可視化して体感できた。また、知識の習得、意識のつながりを支える有効な手立てとなった。
3 おわりに
教師自身が、教材の特性を知り、教材を好きになる。そして、そこに学級の児童の姿を重ねながら単元構想を行っていく。「前の学習とつながっている!」「早く授業の時間が来ないかな!」そんな児童の意識がつながる授業を目指して、これからもまずは、教師としての自分の姿(学び力)を磨き続けたい。
『教育時報』令和5年3月号「私の工夫」で紹介された実践です