【私の工夫】身近な文房具としてタブレット端末を活用するために

倉敷市立玉島東中学校 教諭 加藤 裕晃(所属・職名は執筆時)


1 はじめに

 児童・生徒1人1台端末の活用を目指して取り組むことが求められている。そのため、本校ではICTを利用して思考力を高める対話的な学びを身につけさせることを重点目標として研究を実施した。研究主任と情報教育主任という立場で、どのように働きかければ、学校全体でのICT活用が推進できるかという観点で実践を紹介したい。

2 授業でのICTを推進するために

 タブレット端末を生徒が活用する前に、教員が使いこなせるかが問題となる。ICTに長けた一部の教員だけが活用するだけでは、GIGAスクール構想を実現することはできない。そのため、本校では、まずこの壁をなくすことが課題であると考えた。そこで、多くの活用場面の中で、活用が容易であるロイロノートでの出席管理と各クラスの授業グループを作成することを徹底した。次に、生徒が文房具のように活用するために専用のケースを机にかけるように購入を促した。また、学期ごとに到達目標を設定し、ICTを活用した授業の公開を行うことで、他教科での活用場面を参考に、全ての教員が端末に触れ、足並みを揃えて学校全体で取組を行った。

3 取組の様子

〇ICT活用についての事前準備と心構え
 タブレット端末を使用する際に、必ず問題となることは、情報モラルの教育と活用場面やルールの確認が必要である。端末には、莫大に費用がかかっており、壊れないように使用することは当たり前で、管理体制や活用の場面を決めて、教員が共通認識を持っておかなくては、生徒に指示し、指導することができない。そのため、本校では職員研修を事前に何度も行い、使用前に教室での管理体制の徹底と生徒への指示を掲示物で示し、学校全体で共通して実施した。具体的には、鍵付きのロッカーを開けるタイミングや、端末を回収し充電されていることを確認することなど、細かく教員の動きと生徒の動きを分けて決定した。この取組により、大きな問題を未然に防ぐ効果が期待できたのではないかと考えた。それでも、インターネットの接続不具合や数多くの問題があり、教員の人手不足をあらためて実感する結果となった。

〇 動画を用いての共有と比較
 理科の実験や実習での活動では、その様子を撮影し、編集(0.5倍速)やコメントを加えた動画を提出させることで、短時間で多くのデータや意見を共有することが可能となる。また、体育のダンスやマット運動などの活動では、一瞬の様子を見逃さず保存することで、何度も見返して何が起こったのか復習することができ、話し合い活動がより活発になる様子が見られた。

〇タッチペン機能を活用して
 光の作図など、思考の様子を図示できる単元では、光の道すじをPC端末のタッチペン機能で作図や予想を行う活動を計画し、実験の考察に役立てた。この活動を通じて、生徒がどの場面でつまずいているかを把握することが容易にできる。また、自分の考えを言葉でうまく表現できない生徒でも積極的に提出することができ、他の意見を共有することが瞬時にできる点が有効である。また、評価する際にも思考のプロセスを複数提出させることで、個々の生徒の変容を正確に捉え、保存することができた。

〇学級や道徳の授業でのICT活用
 道徳の授業では、生徒の意見をお互いに読みあい、多くの考えに触れることができるように意見によって色を変えて、カードを提出させた。普段は意見を発表できない生徒も、タブレットだとスラスラと意見を書き込むことができる様子が見られ、新しい一面を発見できた。短時間で一斉授業では拾うことができない程の意見に触れることができるメリットが感じられた。

4 おわりに

 端末を活用して授業を展開する際の課題としては、意見を書き込む、読むことが活動の主体となり教員の質問や働きかけのテンポがとりづらい。文字の入力技術に差がある。タブレットに向かって文字を打つため相手の気持ちを考えた言葉遣いになっていないことなどがある。特に文字入力の差については、全国学力検査での調査方法が変更になる背景があり、その対策を求められている。本校では、キーボード入力の正確さと操作速度を上げるために、操作入力を向上させるアプリを利用し、楽しみながら取り組むことでその壁を無くすことを目指している。


教育時報令和4年11月号「私の工夫」で紹介された取組です